抗体と補体 ウイルスに勝つための小さな味方


“Covid-19”というと聞こえはよさそうですが新型コロナウイルスのことです。
2020年7月現在、未だ収束の目途が立たず、これでは来年のオリンピックも・・・

今回はウイルスに勝つための強い味方「抗体と補体」に焦点を当てていきます。

◆目次◆

1.抗体の働き

2.補体の働き

3.抗体ができるまで

4.まとめ

1.抗体の働き

ヒトには、一度侵入したウイルスとの戦いを記憶して次の戦いに備える獲得免疫が備わっています。
獲得免疫には、液性免疫と細胞性免疫とがあります。
液性免疫では、B細胞がつくる抗体が、ウイルスなどにくっついて細胞への侵入を防ぎ(中和)、マクロファージや好中球など食細胞の目印となって食細胞の食欲(ウイルスを食べる)を増進させます(オプソニン化)。
特に好中球は、抗体がくっついたウイルスを見ると無性に食べたくなるそうです。
抗体はウイルスと1対1関係で決まったウイルスとしか結合できません。
ウイルスが細胞に侵入してしまうと抗体がくっつくことができないので、細胞傷害性T細胞やNK細胞などがウイルスに感染してしまった細胞を破壊して感染の拡大を防ぎます。
これが細胞性免疫です。
抗体は、補体の活性化にも関与しています。

2.補体の働き

補体は、免疫機能の中で活性化されて働くたんぱく質です。
C1からC9まで9種類の補体があり、さらにC1qやC1rなどに分かれています。
補体は別々に機能するのではなく、ある補体が活性化されるとほかの補体も連鎖的に活性化されてその機能を発揮すます。
補体は、抗体がウイルスに結合しているところにくっついて、食細胞の食欲を更に増進させます(オプソニン化)。
また補体は、ウイルスなど外敵の細胞膜に穴を開けて殺します。これを免疫溶菌反応といいます。

3.抗体ができるまで

抗体はB細胞から放出されます。
B細胞には抗原レセプター、BCR(抗体)という突起があり、BCRにぴったり合うウイルスと遭遇するとそれを取り込みます。
あらゆる敵に対応できるよう、先端の構造が異なるBCRを持つB細胞があらかじめたくさん用意されており、リンパ節では未知の敵と戦う新たなB細胞もつくられています。
B細胞は取り込んだ外敵のかけらをリンパ節などでヘルパーT細胞に提示します。
ヘルパーT細胞は、別の経路で外敵を認識します。
B細胞が提示した外敵のかけらとヘルパーT細胞が認識した外敵が一致するとお互いに活性化し合います。
ヘルパーT細胞はB細胞に「抗体をどんどんつくって攻撃を!」と指令を出し、B細胞は増殖して形質細胞となり抗体を活発に放出します。
一部のB細胞は、形質細胞にならずメモリーB細胞となって、同じ外敵が侵入するとすぐに形質細胞になって抗体を放出します。
ワクチンなどの予防接種はメモリーB細胞を効率的に獲得する良い手段です。

4.まとめ

新型コロナウイルスが気持ち悪いのは、抗体(メモリーB細胞)を得ている人がまだ少ないこと、ワクチン開発に一定の時間がかかることだと思います。
残念ながら、免疫力を強化する決定的な方法はまだ明らかになっていないそうです。
ただし、免疫力を下げないための方法は明らかで、質の良い睡眠をとること、バランスの良い食事をとること、適度な運動を心がけることだそうです(過度な運動は一時的に免疫力を低下させる)。

ヒトとウイルスは共存しながら、時に激しい戦いを繰り広げつつ進化してきました。
ヒトは新たな抗体獲得や医療技術など、ウイルスは新たな症状や耐性などです。
このフォーマットは変わりません。

今できることを実行して、より効率的により賢く、ウイルスに勝ちましょう!

<参考資料>
運動・からだ図鑑 免疫学の基本 松本健治(監修)マイナビ出版 2018年
ウイルス・細菌の図鑑 北里英郎 原和矢 中村正樹 技術評論社 2016年

<参考ブログ>
菌とウイルスと手洗い
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