噛むこと=咀嚼(そしゃく)は「口の中で食べ物をよくかみ砕き味わうこと」と定義されています。また、言葉や文章の意味をよく吟味して理解する時にも「咀嚼」が使われます。
◆目次◆
1.咀嚼の効用
2.咀嚼運動をつかさどる神経機構
3.まとめ
1.咀嚼の効用
咀嚼、よくかむことの効用をおさらいします。
よくかむことにはゆっくりかむことも含めます。
・肥満の防止
肥満者と健常者の食行動を比較した研究はたくさんあり、ゆっくり食べることが肥満防止に効果があるとするものや何も効果がみられないとするものなど相反する研究報告もありますが、ゆっくり食べるとエネルギー摂取量が減少する、早食いは肥満につながるとした研究報告が優勢です。
その理論的根拠は、満腹感を感じるのが食後の血中ホルモン濃度のピーク(摂食後、約30分から60分)と一致するとすれば、満腹感を感じた時に早食いの人の場合、ゆっくり食べる人より多くのエネルギーを摂取してしまっているだろうという考えに基づいています。
・栄養素の効率的な吸収
かむことの第一の目的は栄養素の吸収に備えることです。
例えば、ゴマは皮が消化しにくいため、そのまま食べても栄養とはなりませんが、かむことによって消化に適した成分を取り出すことができます。
・脳の活性化
脳の活動を維持、回復させる一番よい方法は脳を働かせることです。
咀嚼は、歯、口腔、舌など様々な器官や筋肉が同調して行われる行為であり脳の様々な部分も同調して働いています。
2.咀嚼運動をつかさどる神経機構
咀嚼は脳の一番下にある脳幹の咀嚼中枢によってコントロールされています。
呼吸や嚥下(食物をのみこむ運動)をコントロールする呼吸中枢や嚥下中枢も近くにあると考えられています。
この咀嚼中枢があることで、物事を認知したり判断したりする脳の重要な部分が損傷を受けても、脳幹が元気ならば口の中に何か噛むものが入るとこれを噛むことができます。
咀嚼中枢には咀嚼のリズムを作りだすリズム発生器と各筋肉の収縮を調整する筋収縮パターン発生器があり、口の中の食物の状況に応じてスムーズな咀嚼運動ができるように回路が組まれていると考えられています。
口の中には受容器(センサー)が指先同様に密に配置されていて、食物の形・量・物性や口の中における位置情報などを逐一脳に報告しています。
咀嚼の時、大脳皮質からの指示の下、咀嚼中枢が組み込まれたプログラムにしたがって口の開け閉めを行っています。
大脳皮質は食物が口に入る前からこれを監視していて、硬い食物を見れば「この食物は硬そうだから力を出したほうがいいですよ。」など咀嚼中枢に指示を出しています。
咀嚼は、脳や様々な器官が同調して行う複雑な行為であり、自律神経系を介して呼吸・血液循環などに影響を与え、脳の中でも本能に関係した辺縁系や人間らしさや個性を作り出す前頭連合野を介して活力を引き出すなど脳の活動を活性化すると考えられます。
3.まとめ
咀嚼は基本動作の一つですから、日ごろあまり意識はしないと思いますが、ゆっくりよくかむことによる効果は決して小さくないと思います。
それにしても「咀嚼」はむずかしい漢字です。
絶対書けません!
<参考資料>
咀嚼をそしゃくする 山田好秋 口腔保健協会 2016年
<関連コラム>
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