脂質、脂肪酸の話(その2)

脂質、脂肪酸の話(その1)に続いて脂肪酸についてちょっと詳しくみていきます。
脂肪酸は脂質を構成する成分でたくさん種類があります。
エネルギーとして利用されるだけでなく、それぞれ特有の働きがあります。

◆目次◆

1.不飽和脂肪酸

2.飽和脂肪酸

3.リン脂質

4.まとめ

1.不飽和脂肪酸

脂肪酸は構造の違いから先ず不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸に分類されます。
不飽和脂肪酸は多価と一価に分類され、多価不飽和脂肪酸にはオメガ3やオメガ6脂肪酸などがあり、一価不飽和脂肪酸にはオメガ9脂肪酸などがあります。
不飽和脂肪酸は常温では液体で主に植物に多く含まれ酸化しやすく動脈硬化の予防や血圧低下など様々な作用をもっています。
◆多価不飽和脂肪酸
☆オメガ3脂肪酸
オメガ3脂肪酸は細胞膜成分の5%程度を構成していて主に血液循環を促進する働きがあり生活習慣病の予防に役立つとされています。
またプロスタグランジンというホルモンの材料となり、プロスタグランジンは血圧の上昇・降下、痛みの発生、発熱、筋肉の収縮、子宮収縮などの作用を引き起こす重要なホルモンです。
主なオメガ3脂肪酸
【α―リノレン酸】
しそ、えごま、菜種(キャノーラ)、大豆、亜麻の種子など植物に多く含まれる必須脂肪酸(注)の一つで1日当りの必要量目安は約2gです。
(注)必須脂肪酸とは体内で合成できない脂肪酸でα―リノレン酸とリノール酸とがあります。
EPAとDHA、γ―リノレン酸とアラキドン酸は体内で合成できますが必要量が不足しがちなため広義の必須脂肪酸に含まれます。
【EPA(エイコサペンタエン酸)】
魚油、肝油、にしん、さば、さけ、いわしなどに含まれるほか母乳にも含まれる広義の必須脂肪酸です。
【DHA(ドコサヘキサエン酸)】
たら、にしん、さば、さけ、いわしなどに多く含まれ、日本人は魚類を食べることで摂取していましたが近年は摂取量が減少しています。
中性脂肪を減らし脳の神経機能を高めるとして食品添加物やサプリメントに利用されていますが過剰摂取は血液が固まりにくくなるなどのリスクがあるそうです。
☆オメガ6脂肪酸
オメガ6脂肪酸には必須脂肪酸であるリノール酸などがありますが、摂りすぎるとアレルギーをおこすなど過剰摂取には注意が必要です。
主なオメガ6脂肪酸
【リノール酸】
ベニバナ、ひまわり、とうもろこし、ごま、大豆などに多く含まれる必須脂肪酸で、体内でアラキドン酸を経て生理活性物質や細胞膜の膜脂質の原料となりますが過剰摂取は大腸ガンなどのリスクがあるそうです。
【γ―リノレン酸】
メマツヨイグサの種子に多量に含まれる広義の必須脂肪酸でプロスタグランジンの前駆体となるため血糖値、コレステロール値、血圧を下げる効果があるそうです。
また抗炎症作用がありにきびや湿疹など肌トラブルの改善が期待されています。
【アラキドン酸】
肉類や魚介類、レバー、卵などに含まれ体内で合成できますが1歳未満の乳児は合成する力が弱いため粉ミルクなどにアラキドン酸を添加したものがあります。
広義の必須脂肪酸。
アラキドン酸の一部が脳内で変化したアナンダミドという物質は、幸福感や高揚感をもたらす脳内麻薬物質の一つであるとともに、ワーキングメモリー、睡眠パターン、鎮痛、接触の調節、動機づけなど心理・行動に対する多彩な役割があると考えられていて子宮での胚の着床にも重要とされ免疫抑制作用にも関与しているそうです。
◆一価不飽和脂肪酸
不飽和脂肪酸のうち炭素間の二重結合を一つ持ち酸化しにくい特徴があります。
主な一価不飽和脂肪酸
【イコセン酸(ゴンドウ酸)】
植物油やナッツなどに含まれ、酸化しにくく370℃以上の高温でも変化が少ないとされています。
また皮脂バランス調整作用、保湿作用、殺菌作用などが報告されています。
【オレイン酸(オメガ9脂肪酸)】
筋肉の膜脂質の50%、細胞膜の10~20%を占める重要な脂肪酸です。
体内でステアリン酸から合成できるため必須脂肪酸ではないですが酸化しにくく健康に良い脂肪酸です。
オリーブオイルから単離されたことが名前の由来で血中コレステロールを減らして生活習慣病を予防する働きが報告されています。
豚の油(ラード)や牛脂にも全脂肪中に50%のオレイン酸が含まれ母乳の25%もオレイン酸です。
【エルシン酸(オメガ9脂肪酸)】
アブラナ科植物の種子に含まれ、なたね、からしなどの種子から作られる植物油の40~50%を占める脂肪酸です。
過剰摂取すると心臓障害を引き起こし心不全のリスクが高まるとの報告があり、品種改良によってエルシン酸を含まないなたね「キャノーラ」が生まれ現在流通しているなたね油のほとんどはキャノーラから生産されています。
【10-ヒドロキシ-2-デセン酸】
ローヤルゼリーに2~6%含まれる特殊な脂肪酸で女王バチの長寿の基と考えられています。腫瘍の血管新生を阻害する研究や肌の潤いを増すという報告があります。
☆オメガ7脂肪酸
オメガ7脂肪酸は動物にはあまり含まれておらず重要性が低いとされていましたが、コレステロールを減少させ、動脈硬化や高血圧を防いだり、インシュリンの分泌を促したり、血管の弾力性を保つなどさまざまな働きがあるとして注目されているそうです。
【バクセン酸】
牛などの脂肪、牛乳やバター、ヨーグルトなど乳製品に含まれ、哺乳類の体内で抗発がん性のあるルーメン酸に変換したりコレステロールを低下させる作用が報告されるなど健康によいとされています。
【パルミトレイン酸】
さまざまな動物性油脂、植物油、魚介の油に含まれ特にマカダミアナッツなどに高濃度で含まれます。
肝臓脂質の代謝を促進することで糖尿病による高血糖などを低減する作用が報告さており、この脂肪酸を多く含む油の摂取は肥満の予防になる可能性があります。

2.飽和脂肪酸

飽和脂肪酸は常温で固体の脂肪酸で、乳製品や肉などの動物性油脂に多く含まれ、体内で重要な働きをします。
永い間その過剰摂取は血液中の悪玉コレステロールが滞り動脈硬化の原因となり得ると考えられてきましたが、脂質制限と動脈硬化の予防になんの関連性もないことや卵(コレステロール)の摂取制限が無くなったことなどがあきらかになっています。
◆短鎖脂肪酸
炭素数が3から8の脂肪酸で主に臭い成分となるものでイソ吉草酸、エナント酸、酪酸などがあります。
◆中鎖脂肪酸(MTCオイル)
炭素数が9から12程度の脂肪酸を中鎖脂肪酸といい、直接肝臓に運ばれて利用されるため長鎖脂肪酸よりも分解されやすく体に脂肪がつきにくい性質があるそうです。
主な中鎖脂肪酸
【ペラルゴン酸】
動物に対する毒性が低い除草剤などに利用されヒトの皮膚にも存在し加齢に伴う臭いの原因物質です。
【カプリン酸】
山羊の油から摂れ、パーム油、ココナッツオイル、バターにも含まれています。
【ラウリン酸】
ココナッツオイル、パーム油に含まれ母乳の匂い成分にもなっています。
抗菌活性を持っていますがヒトに対する毒性が非常に低いため石鹸やシャンプーに多く用いられています。
◆長鎖脂肪酸
炭素数13以上の脂肪酸で動植物の細胞膜は主に長鎖脂肪酸で構成されています。
主な長鎖脂肪酸
【アラキジン酸(エイコサン酸)】
ピーナッツ油に約1%含まれ、大豆油やひまわり油にも約2%含まれています。
【ステアリン酸】
牛脂をはじめ多くの動植物の油脂に含まれる代表的な飽和脂肪酸で日光にさらされても変質しないなど安定性が高いため食品添加物などに使用されています。
【パルミチン酸】
パーム油やココナッツオイルの主な構成成分で、アフリカではマルラという植物から摂れるオイルにオレイン酸とともにパルミチン酸約16%が含まれ皮膚の水分含有量を増加させるため保湿オイルとして使用されています。
【ベヘン酸】
なたね油やピーナッツ油などに含まれショートニングの原料となります。
血中コレステロール値を上昇させる作用があり過剰摂取には注意が必要です。
【ペンタデカン酸】
乳脂肪に含まれ女性の脱毛症(FAGA)にペンタデカン酸グリセリド配合製剤の効果があるとされています。但し外用薬であるため飲んでも効果はないそうです。
【ミリスチン酸(テトラデカン酸)】
ココナッツオイルやパーム油などに含まれ化粧品の潤滑剤、増粘剤、安定剤として口紅、アイシャドウ、ファンデーションなどに用いられています。

3.リン脂質

分子構造中にリン酸エステル部位を持つ脂質の総称で糖脂質やコレステロールとともに細胞膜の主要な構成成分となり生体内シグナル伝達にも関わる重要な物質です。
主なリン脂質
【ホスファチジルコリン】
神経伝達物質であるアセチルコリンの材料となるとても重要な物質です。
【レシチン】
卵黄、大豆製品、穀類、ごま油、コーン油、小魚、レバー、うなぎなどに含まれる動植物すべての細胞中に存在する生体膜の主要な構成成分です。
レシチンの必要量は体重60㎏に対して約600gで不足すると疲労、免疫力低下、不眠、動脈硬化、糖尿病、悪玉コレステロールの沈着など多くの症状の原因となり得るそうです。

4.まとめ

脂質はたんぱく質や糖質とともに3大栄養素のひとつでたくさん種類がありその作用も様々です。
多くの食品に含まれているため不足する心配はあまりないですが、酸化したもの(古い油)は避けて動物性、植物性にこだわらず摂ると良いと思います。
<参考資料>
健やかな毎日のための栄養大全 上西一弘ほか監修 NHK出版 2022年
糖質疲労 山田悟 サンマーク出版 2024年
からだにおいしいあたらしい栄養学 吉田企世子ほか監修 高橋出版
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