脳腸相関(ホルモンの働き)

脳と腸は密接に結びついてお互いに影響を及ぼしあっています。
脳は迷走神経や交感神経を介して腸に指令を伝え腸は内臓感覚神経を介して脳に情報を送っています。
実際の指令はホルモンの働きによって行われています。

◆目次◆

1.ホルモンによる情報伝達

2.ストレスでお腹や胃が痛む

3.腸も脳に指令を出す

4.まとめ

1.ホルモンによる伝達

脳は迷走神経や交感神経などを介して腸に指令を伝えていますが実際にストレスや情動(情動:恐怖・驚き・怒り・悲しみ・喜びなどの感情で一時的なもの。情緒)をどのように伝えているのでしょうか。
これらはホルモンの働きによって伝えられています。
脳にはニューロンやグリア細胞のほかにホルモンを分泌する神経内分泌細胞が視床下部に存在しています。
視床下部とそれに連なる下垂体前葉と下垂体後葉には様々な神経内分泌細胞が存在していてホルモンを分泌しています。
まず、下垂体後葉には出産や授乳を調節するオキシトシンや体内の水分や血圧を調節するパソブレシンを分泌する神経内分泌細胞があります。
視床下部からはホルモンの放出を引き起こすホルモン(放出ホルモン)やホルモンの放出を抑制するホルモン(放出抑制ホルモン)が分泌されます。
下垂体前葉からは視床下部から放出された放出ホルモンや放出抑制ホルモンに反応して甲状腺刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、性腺刺激ホルモン(卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン)、プロラクチンなどが分泌あるいは抑制されています。
分泌されたホルモンは特定の臓器に作用してさまざまな生理作用を引き起こします。

2.ストレスでお腹や胃が痛む

例えば朝の通勤中にお腹が痛む時、どのような事が身体の中で起きているのでしょうか。
ストレスを感じると視床下部から副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンが分泌されます。
副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンにはⅠ型とⅡ型の受容体があって、ストレスによって分泌された場合、Ⅰ型の受容体が発現し副交感神経に作用します。
その結果、結腸や大腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)がさかんになりお腹が痛くなったり緩くなったりします。
大事な会議や試験直前などに胃が重い、痛いといった時はどうでしょうか。
この時は、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンが胃や十二指腸を支配している迷走神経のⅡ型の受容体に結合して胃の動きを抑制するため消化不良が起こったり胃が痛んだりします。

3.腸も脳に指令を出す

食事を摂らないと空腹を感じたり食事を摂れば満腹を感じるなど、腸は求心性迷走神経(内臓感覚神経)を介して脳に情報を伝えています。
それでは腸は脳に指令を出すことができるのでしょうか。
腸にもホルモンを分泌する腸内分泌細胞があって、「お腹が空いた。」と感じると胃内分泌細胞から食欲を促進するグレリンというホルモンが分泌されます。
食事を摂ると十二指腸の腸内分泌細胞からコレシストキニンというホルモンが、小腸からグルコガン様ペプチド-1というホルモンが分泌されます。
私たちの体には働きの異なる2種類の脂肪細胞があって、皮下組織や胃や腸など内臓の周りにある白色脂肪細胞は体内の余分なエネルギーを脂肪として貯蔵していて、鎖骨や胸の周囲にある褐色脂肪細胞は脂肪を燃焼して熱を産生しています。
食事を摂ると白色脂肪細胞からレプチンというホルモンが分泌されます。
このように胃や小腸、白色脂肪細胞から分泌されるさまざまなホルモンによって体内のエネルギー状態に関する情報が脳に伝達され指令となります。

4.まとめ

脳と腸は様々なホルモンによって相互に情報・指令のやりとりをしています。
ストレスなどは脳や腸に様々な影響を与えますが腸に住むもっと小さな生き物に影響を与えています。
次回は腸内フローラと脳や腸の関係についてみていきます。
<参考資料>
「腸と脳」の科学 坪井貴司 講談社 2024年
<関連コラム>
脳と腸をつなぐネットワーク