脳腸相関(脳と腸内フローラ)

私たちの腸には約4兆個もの腸内細菌が棲んでいて腸内フローラを形成しています。
腸内細菌は500~1000種類もいて様々な働きによって私たちのからだに影響を及ぼしています。

◆目次◆

1.腸内フローラは隠れた臓器

2.肥満と腸内フローラ

3.ストレスと腸内フローラ

4.まとめ

1.腸内フローラは隠れた臓器

私たちのからだは摂取したもの全てを消化・吸収できるようにできていません。
例えば食物繊維は直接、消化・吸収することはできませんが腸内細菌がこれを分解して短鎖脂肪酸を産生してくれています。
短鎖脂肪酸には酢酸、プロビオン酸、酪酸などがあり私たちはこれをエネルギー源などに利用しています。
腸内細菌の中にはビタミンB類やビタミンKなどを産生するものもいます。
神経伝達物質であるセロトニンは腸内フローラで別に産生されるL-トリプトファンや腸の粘膜細胞が産生する5-ヒドロキシトリプトファンを原料に腸内細菌が産生してくれています。
乳酸菌やビフィズス菌の中にはGABA(ギャバ)と呼ばれるγ-アミノ酪酸を産生するものもいます。
私たちはビタミンKを血液凝固などのために、セロトニンやGABAといった神経伝達物質を腸管神経系調節などのために利用しています。
このように腸内フローラは私たちが体内でつくれない物質を産生してくれているので「隠れた臓器」と呼ばれています。

2.肥満と腸内フローラ

腸内フローラはおよそ20%の善玉菌、10%の悪玉菌、70%の日和見菌で構成されています。
生まれる前の赤ちゃんは無菌状態で腸内細菌はほとんど存在せず出産直後、母親の産道や皮膚に存在する細菌、環境中の細菌に触れることによって腸内フローラが形成されます。
3歳頃には安定した状態になり、一度獲得した腸内フローラは比較的安定した状態で維持されます。
腸内フローラは国籍や年齢、個人ごとに腸内細菌の種類や組成が異なっています。
近年、腸内フローラの研究が進んでいます。
肥満したマウスの腸内フローラを無菌マウスに移植すると劇的に太ってしまい、太った人の腸内フローラを移植しても太ってしまったそうです。
このため腸内フローラの組成が体脂肪の蓄積に影響を及ぼしていることが考えられていますが、高脂肪で食物繊維の少ない食生活によって腸内フローラの組成が変化した結果として肥満になるとの考えが有力なようです。
普段の食生活は腸内フローラの組成に影響を及ぼします。

3.ストレスと腸内フローラ

食生活だけでなくストレスによっても腸内フローラの組成が変化することが明らかになっています。
NASAでは宇宙飛行士が宇宙船や宇宙ステーションで長期間閉じ込められるという高いストレスの状態で体がどのように変化するか様々な角度から検討されていて、腸内フローラの組成にも変化が見られたそうです。
阪神淡路大震災の直後、心理的にも身体的にもストレスの高い状態で腸内フローラにカンジダ菌が増えることが報告されました。
カンジダ菌は免疫機能が低下した人に生じる日和見感染の原因となる菌です。
小腸には病原性の細菌に応答して殺菌するαデフェンシンという物質を分泌するパネート細胞という細胞があります。
αデフェンシンは病原性細菌を殺菌する一方、腸内フローラの細菌にはほとんど殺菌効果を示しません。
αデフェンシンが正しく分泌されないと腸内フローラのバランスが乱れて炎症性腸疾患などを発症します。
αデフェンシンはストレスによって分泌量が低下することが明らかになり、ストレスは脳が処理していることから、脳腸相関に腸内フローラも関与していると考えられるようになりました。
腸内フローラから脳への情報伝達はどうでしょうか。
無菌マウスの腸内フローラに特定のビフィズス菌を定着させるとストレスを受けた時に分泌されるコルチゾールの分泌量が低下するそうです。
このため腸内フローラから脳へストレスを抑制するための何らかの情報が伝達されていると考えられるようになりました。
腸内フローラは記憶を司る海馬や情動を司る偏桃体のニューロンの生存や成長に必要不可欠な脳由来神経成長因子の発現にも関わっているようで、海馬や偏桃体の脳由来神経成長因子の発現が低下したマウスは不安行動が増えてしまうそうです。

4.まとめ

腸内フローラ、たくさんの小さな細菌たちが私たちを支えてくれています。
「細菌の存在なくして生命はなりたたない。」とパスツール(細菌学者)は言ったそうです。
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