まだ油断できないですがコロナ禍が過ぎ去ろうとしています。
このパンデミックは長い間、私たちの生活を縛り世界中に災厄をもたらしました(個人的には過剰報道によるインフォデミックと思っていますが・・)。
この間、健康志向はさらに高まり「ほんとうですか?」と思わず首をかしげたくなるような効能を謳ったものも見られるようになりました。
本来、私たちの体はとても複雑で未だ解明されていないことも多いのに少し安易すぎるような気もします。
しっかりした研究でも研究結果に不一致が生じることがあります。
例えば、ある栄養疫学研究では「過度な減塩はむしろ健康にマイナス」という結果が示されたことがあったそうです。
一般的に減塩は高血圧や脳卒中や心筋梗塞のリスクを回避するために有効との認識ですが、どういうことなのでしょうか。
◆目次◆
1.減塩は健康にマイナスか
2.減塩はしないほうがよいか
3.まとめ
1.減塩は健康にマイナスか
件(くだん)の研究は世界17か国に住む35歳から70歳の人、およそ10万人を対象に食塩摂取量と循環器疾患の発症・死亡との関連を調べたもので、この研究では食塩摂取量が多い場合だけでなく少ない場合でも循環器疾患の発症・死亡リスクが高まるとの結果が示されました。
三大生活習慣病といえば、脳卒中、心筋梗塞、がんであり、このうち脳卒中と心筋梗塞が循環器疾患ですが前述の研究には心不全も含まれていたそうです。
心不全は心臓の血液拍出力が足りず血液を充分に送り出せない状態により肺や体のさまざまな部分に血液がたまってしまう疾患です(うっ血性心不全)。
原因が多岐にわたるため予防や治療がむずかしいとされていますが、減塩によるナトリウム制限が最も重要と考えられておりこの点で件の研究結果と一致しません。
別の研究でアメリカ人の成人1万362人を対象に食塩摂取量と心不全の発症との関連を19年間にわたり調べた結果では、BMIが25以上の太っている人が1日当たり10グラム以上の食塩を摂取すると心不全のリスクが高まり、太っていない人は食塩摂取量と心不全発症リスクとの関連は見られず、過体重の有無に関わらず食塩摂取量が少ない人たちでは心不全は増えも減りもしないことが示されました。
2.減塩はしないほうがよいか
例えば心不全は「慢性心不全治療ガイドライン」で食塩摂取量を重症の場合1日3グラム以下、軽症の場合7グラム以下に抑制することが推奨されています。
血液量は体内のナトリウム量(食塩の量)によって決まり、ナトリウム量が多いと血液量が増えうっ血が悪化すると考えられるからです。
日本人は総じて食塩を摂り過ぎる傾向があり、摂取量が1日当たり7.6グラム未満の人は全体の約8%しかいません。
高血圧、脳卒中、心筋梗塞の予防にはやはり減塩が欠かせないと考えるべきでしょう。
心不全の予防や治療にも現時点では減塩が望ましそうです。
3.まとめ
情報が大量かつ容易に手に入る時代になりました。
このような時だからこそ、一つ一つの情報に一喜一憂するのではなく、その内容を良く吟味するようにしたいものです。
<参考資料>
データ栄養学のすすめ 佐々木敏 女子栄養大学出版部 2018年
<関連コラム>
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体の構成成分。無機質化合物ミネラル
